あらすじ(ネタバレなし)
小学6年生の**小此木優子(ヤサコ)**は、電脳ペット「デンスケ」とともに引越し先の大黒市へ移り住みます。大黒市はAR技術「電脳メガネ」の先進都市で、子どもたちが独自に電脳世界を探索する文化が根付いています。
そこでヤサコは、電脳操作に異常なほど長けた謎の転校生**天沢勇子(イサコ)**と出会います。孤独で秘密めいたイサコは、電脳空間に潜む何かを追い続けています。
やがて二人は、大黒市の電脳空間に隠された秘密と、イサコが抱える深い過去へと引き込まれていきます。
世界観:電脳メガネと二重になった現実
本作の舞台は、全国民が「電脳メガネ」と呼ばれるARグラスを日常的に着用する近未来の日本です。現実の街並みに電脳世界が重なり、子どもたちはその二重空間を遊び場にしています。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 電脳ペット | 電脳世界にのみ存在する仮想のペット。電脳メガネ着用者にしか見えない |
| イリーガル | 電脳空間のバグから生まれた謎の生命体 |
| メタバグ | 強力なイリーガル。物語の核心と深く関わる |
| ブラックゾーン | 現実と電脳が固定されたまま残った場所。過去に何かが起きた痕跡 |
スマートフォン普及前の2007年に、AR・デジタルペット・仮想空間の概念を緻密に描いた設定は、現在も「時代を超えていた」と語られます。第29回日本SF大賞 特別賞を受賞。
見どころ
2007年に描かれた「AR社会」の先見性
現実の街にARが重なる世界、デジタルペット、仮想空間のバグ生命体——これらをスマートフォン以前の時代に描き切っています。現在の技術と比較しながら見ると、その先見性が際立ちます。
子どもの冒険から深まるSFミステリー
前半は電脳ペットとの探索がメインですが、中盤以降は電脳空間の「怖さ」が増していきます。子ども向けの冒険譚として始まり、SFミステリーとして深化する構成が本作の特徴です。
ヤサコとイサコの関係の変化
対立から始まる二人が互いを理解していく過程が、本作のドラマ的な核心です。後半でイサコの過去が明かされるにつれ、感情的な深度が一気に増します。




